前回は、初めてのチェーン交換でした。
ところで都市伝説みたいなものって昔からいくつもあります。
そこまでじゃなくても、業界ごとの「定説」はどこにでもありますよね。
特に何十年もやってきた業界のプロの話はいつも説得力があります。
しかし、その中には実は時代の変化についていってない話も、あったりします。
今日はSIL-TECチェーンはパーツクリーナー禁止なのか?について。
SIL-TECチェーン
SIL-TEC(シルテック) | SHIMANO BIKE COMPONENT
SIL-TECとはチェーンの表面にフッ素コーティング加工をし、摩擦を低減する技術です。
通常のフッ素加工より耐久性をアップしているとか。
105はインナープレート、アルテグラはアウターも、デュラエースチェーンはローラーまでもSIL-TECが適用されているそうです。
ちなみにフッ素コートとテフロンコートは同じもので、今後2つの単語が登場しがちですがご了承ください
パーツクリーナー禁止説
アマゾンを見ていたら、デュラエース相当のHG901チェーンの説明文に「速乾性のあるパーツクリーナーは使うな」と書いてあります。
※クイックリンク仕様のほうには書いてない
なんと、パーツクリーナーを使うとチェーンが痛み、切れやすくなるという・・・。
なぜ!?
しかしこれ、SHIMANOの公式文書なんでしょうか?
2020年現在、SHIMANOのチェーンに関するマニュアルや、チェーンに付属する2019年版の説明書にはそんな記載はありません。
それとも、2019年より以前はそのようなことが書かれていて、現在は削除されたということなんでしょうか?
ちなみにHG701、HG601にもSIL-TECは使用されていますが、そのような記述はありません。
どうしてHG901のAmazonの商品説明文のところにだけそういう文章が書かれているのか?
このあとのリンク先の記事で書かれていますが、そもそもパーツクリーナーごときでSIL-TECは剥がれないようです。
仮にフッ素コートが剥がれたとして、パーツクリーナーで金属チェーンをどうやって破壊できるのか?
これに関しては、次の謎と合わせて解き明かされることとなります。
強い溶剤で徹底的に清掃してはいけない説
誰かはわからない詳しい人(にインタビューしたという話。
強い溶剤で洗浄するとローラー内部に封入されたグリスが溶けてなくなってしまう、という。
いやいやいや、そのローラー内部を洗浄するためにボクたちはチェーンを外して灯油でシェイクしたり毎週チェーン清掃したり、チマチマ変態じみたこだわりで一生懸命やっているのだぞ!!
それがすべて間違いだったとしたら・・・(膝をつく)
が、まず冷静になって考える。
我々がローラー内部まで徹底的に洗浄するのはなぜか。
それはローラー内部まで細かい砂や汚れが入り込んでしまうからです。
それを除去しないことには、ローラー内部の砂や汚れによってチェーンの内部でヤスリがけ現象が起こってどんどん削れてしまうわけです。
しかしローラー内部なんて見えるわけがないので、手触りや勘と経験によって完全に清掃できたか判断しているようです。
そして、なんでSHIMANOがそんなに口うるさくしつこく言うのか。
それは企業として、テストして100%安全が確認されたこと以外は推奨するわけにいかないからです。
極稀に、講習会などで「まあ実際に現場ではこういうこともあるようですが~」と一例で紹介するに過ぎません。
企業として正しい姿であり、実験で確認できていないことを保証できるグローバル企業なんてありませんからね。
パーツクリーナーや強力な溶剤で洗浄してはいけない理由があった
皆さんはチェーン清掃をしたあと、どういうタイミングでオイルを注油していますか?
「どういうタイミング」ここが非常に重要です。
パーツクリーナー説も強力な溶剤説も、どちらもチェーンが破断しやすくなる恐れがあると言っています。
オイルが塗布されているのになぜチェーンが破断しやすくなってしまうのか?
それは徹底的に洗浄されてカラッカラになったチェーンに、注油したつもりが適切に注油できていないユーザーが多いため、そのような警告をしていると読み取れます。
もしローラーの内部までオイルが浸透しないまま乗り始めてしまったら、カラッカラの内部が擦れ金属疲労や発熱を起こし、チェーンが破断するという結末を迎えてしまうわけですね。
つまり、どうすればいいんだってばよ
要するに、内部まで十分に注油できていることが大事、というわけです。
しかしなぜ適切に注油できていないユーザーが多いのか。
そこにはたった一つの落とし穴があります。
パーツクリーナーや洗浄液の除去不足。
パーツクリーナーや洗浄液は、油を分解する能力があります。
もしそれらがチェーンのローラー内部に残ったまま、外部からオイルを注油するとどうなるでしょうか?
オイルがローラー内部に達しても、残っていた洗浄液などに分解されて潤滑能力を失ってしまうのです。
逆に言えば、注油の最大のポイントは内部の洗浄液を完全に除去するところにある、と言っても過言ではないわけです。
具体的なチェーン洗浄方法
AZのチェーンディグリーザーなどの洗浄液と、クリーニングの機械はわりと有効です。
これで万事がOKとは言い難いですが、かなり良いです。
この洗浄液の良いところは浸透性が高くローラーの内部まで入り込むところ。
そしてもうひとつは、水溶性クリーナーなので水ですぐに流れるところ。
この2つの特性をわかりやすく説明すると、
- あっという間にローラーの内部に入り込んで、
- 汚れを泡で包み込み
- 水を流すと汚れとともに流れ落ちていく
ということになります。
これは世の中すべての洗剤の基本なんですが、このAZのクリーナー液は特に水で流れやすくベタつかないのがとても良いです。
しかし、逆に言えば水が使えない環境では洗浄液を落としにくいという問題もあります。
水で流さない限りはいつまでもヌルヌルするので、とうぜん新しいオイルも分解してしまいます。
もしかしたら、後述する泡クリーナーならなんとかなるのか?気になるところです。
写真にあるクリーニングの機械はいろんな方向にブラシが付いているので、チェーン表面の細かいところの汚れをかきだしてくれます。
特にインナープレートやアウタープレートの内側なんかは、手作業のブラシだと発狂しそうになります。
あくまでも手動機械なので、回転スピードを遅くしたり早くしたりしてやると汚れが落ちやすいです。
※あくまでも私流のやり方です!プロの世界ですらさまざまなやり方がありますから、正解はひとつではありません。それぞれの作業環境にあった清掃方法を模索するのも、ロードバイクの楽しみの一つかと思います。
EVERS(エバーズ) 泡クリーナー 自転車丸洗いクリーナー(泡タイプ簡単洗浄剤) 水なし! 簡単泡洗浄! 480ml スプレー式 ディグリーザー 樹脂パーツ対応 拭き上げのみ AWA-480
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このような泡タイプのクリーナーも似たような性質があります。
泡タイプのスプレーは要するに水の代わりに使うものなので、油を落とす能力はとても低いです。
なのであくまでもほとんどの油を除去したあとに使うイメージです。
AZ(エーゼット) KM-001 極圧・水置換スプレー [多目的・多機能・多用途・超潤滑防錆浸透 オイルスプレー/浸透防錆潤滑油/浸透 防錆 潤滑剤] 420ml
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はっきり言って水置換スプレーなしには生きていけない気がします。
ある程度の汚れを除去する能力もあり、水分と入れ替わり金属に貼り付く特性があり、浸透能力はバツグンという、とんでもないオイルです。
しかしあまりにサラサラなため長時間は持たないとか、雨が降ると流れやすいとか一般的には言われていますね。
- パーツクリーナーであらかた吹き飛ばし、ウエスでゴシゴシ拭く
- ディグリーザーと洗浄器で溶かす
- 水をかけてディグリーザーを流す
- 水分をあらかた除去するためウエスで吸い取りつつゴシゴシ拭く
- 車体などをキレイにし時間稼ぎをしたあとに、水置換スプレー
- すぐにクランクを回さずしばらく時間稼ぎをする
私はこんな感じの手順でやっています。
さすがに毎回はやりませんが、それでも300kmに1回はやってるか・・・。
これやると徹底的にキレイになってしまうので、ホント気持ちいいんですよね。
その代わりディレイラーあたりもカラッカラになってしまうので、あちこち注油しないといけないという難点もΣ(゚Д゚)
注油したあとは一晩置いたほうが良いというメカニックもいますね。
私は10分ほど置いてからクランクをグルグル激しく回していましたが、今度からは注油したらなにもせず一晩置いて十分に浸透させることを考えてみようかな?
まとめ
というわけで、記事のタイトルにもあったパーツクリーナーですが、別にいいんじゃね?という気がします。
プロレーサーにつくメカニックもパーツクリーナーでブシャーってやってウエスで拭けばOK!っていう人もいますしね(お手軽な場合のみですが)
今回はSHIMANOのマニュアルについても知ることができ、非常にいい勉強になりました。
かつて実業団で走っていた人が、SHIMANOのマニュアルはわかりやすいよって言っていましたが、ようやく意味がわかりました。
マジで、わかりやすいw
ああいうのはプロしかわからない暗号の世界だと思っていました。
それにしても、なぜスポーツバイクのチェーンってこんなに面倒なのかと言えば、それは11速もあってチェーンがペラッペラだからなんですよね。
ママチャリなどのチェーンはよく見るとけっこうゴツいです。
それは注油もなにもしなくてもとりあえず走れちゃう耐久性を重視しているからです。
しかしスポーツバイクの多段変速用チェーンは、あまりに繊細です。
まだまだいろんなことを勉強しないといけないな、と思いました(´ε` )